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『陸上競技考』~「ボルトvs.ゲイ」の陰で思うこと~

なんと!
朝、起きて時計を見たら7時44分(>_<)
昨日の係の人の言葉が重くのしかかります。
内心「もうだめかも・・・」という気持ちになりつつ、
あわてて身支度。
「走るより地下鉄よりタクシーだ!」
と考え、
言葉も通貨も異なる国の実質初日の朝に、
いきなりタクシーに飛び乗りました(^_^;)
前日降りたバスターミナルに、タクシーが客待ちしていたのを
たまたま覚えていたのが役立ちました。

頭の中には、チケットを求める人の長蛇の列・・・。
さて、いかに・・・。

8時10分。
会場となる五輪スタジアムに到着。
私の前に並んでいたのはわずか8人!
安堵と同時に、当日チケットが残っているのか不安になり、
前に並んでいた人に聞いてみたところ、
「今年は国際陸連のダイアモンドリーグで、(選手のレベルが)高いので
(イコール人気があるということ)、チケットが余っているか分からない」
とやはり不安そうでした。

9時前にチケットオフィスが開くことなく、
定刻どおりにオープンしました。
先頭の人を見るかぎり、チケットが買えそうな雰囲気。
そして、いよいよ私の番。
立ち見でもなんでも良いと思っていたので、
入れるだけでOK!!!
で、勧められたのがバックストレートの比較的前列の座席。
日本円で6,600円くらいですが、
取得できるのであれば安いです。


(私が帰る頃には行列に)


(チケット)


「大仕事」(笑)を終え、足取り軽く街の中心部まで散策しながら戻りました。
歩いてみると大した距離はなく、2kmほどでした。

日中、18時の競技開始までの数時間、
散策したり買い物したりして過ごしました。
スウェーデンは海辺がきれいで、大小島があるので、
本来なら3~4日かけて過ごすところですね(^_^;)


(街なかのマーケット)


(市街地)


(adidas)


(湾)

さて、いよいよ17時半頃、スタジアムへ。
私としては男女の中長距離種目が楽しみですが、
やはり、男子100mが今回の超目玉。
もちろん、私も楽しみにしてきました。
残念ながらアサファ・パウエル(ジャマイカ)が欠場となり、
男子の3強が勢ぞろいとはいきませんでしたが、
昨年のベルリンの世界陸上で戦った両雄、
ウサイン・ボルト(ジャマイカ/世界記録保持者)とタイソン・ゲイ
(アメリカ)が再び顔を合せました。



(古い造りのスタジアムがなんとも美しい)


(つながった座席)


(満員)

ひとつひとつ取り上げたらキリがありませんが、
次から次へとトラックでもフィールドでも好ゲームが繰り広げられ、
まったく飽きません。
そして、ぎっしり埋まった観客席から席を外す人がほとんどいません。
みんなトイレにも行かず、ビールも買いに行かず、
時に跳躍の選手のリズムに合わせて手をたたいたり、
トラックを駆け抜ける選手に拍手と声援を送りながら、
真剣に観戦していました。
スウェーデンに限らずヨーロッパの人たちの陸上競技への
関心の高さと、競技を観る目をうかがい知ることができました。

大変申し訳ないですが、
日本ではあまり人気がないと言わざるを得ない
「走り幅跳び」で、
選手と観客が一体となっている様に、なぜだか自然とこみ上げてくるものがありました。
それはそれはすごい盛り上がりです。
日本ではどちらかと言うと、長距離が人気ありますが、
こちらはむしろフィールド競技が人気あるのかもしれません。
これもスウェーデンに限らず他のヨーロッパ諸国に共通だと思います。




また、細部まで研ぎ澄まされたトップアスリートの身体を見ていると、
ある種の「芸術品」のようにすら思えました。
私もいちランナーとして、
そこに至る選手たちの努力が容易に想像でき、
心から共感しました。

日本人選手がいずれの種目にもエントリーしていない(できない?)ことからも分かるように、
そうそうたる選手が真夏の北欧を駆け、跳び、舞い続けました。


(夜9時近くてもまだ明るい)

そして、男子100m決勝。
20時56分。
予選はボルトが1組、ゲイが2組をそれぞれ1位通過。
今年からルール変更で、フライングをすると1回目から失格となるので、
選手はもちろん、観ている方も神経質になります。

静まり返る場内。
そして、乾いた音が響き渡る。
余韻が残るうちに、あっという間にゴール。
何度かスタートのやり直しがあり、
私は場内の電光掲示板に映し出される映像を
4分以上じっと撮り続けました。
バックストレートから生の走りを目に焼き付けるか、
スクリーンの映像を撮るかで悩みましたが、
予選を見た感じ、遠くて少し暗くて見づらいので、
映像のほうを優先しました。

結果はタイソン・ゲイが雪辱を果たしました
(9秒84)。
ウサイン・ボルトは、前評判どおり、本来の力を発揮することなくストックホルムを後にしました。

ゲイに限らず、こちらの人たちの勝者に対しての惜しみない拍手と、
それが示す選手への尊敬の気持ちがとても大きいことを感じました。

選手が競技場に立つ時はひとりでも、もしかしたら観客の声援や
それが作り出す場内の雰囲気が、
0.1秒でも速く、1cmでも高く、1mでも遠くに、
選手のパフォーマンスを伸ばすのかもしれない、
と本気で思えました。

勝っても負けてもすがすがしく帰っていく選手の後ろ姿を見ていて、
なんだかそんな気持ちになりました。

真夏の長い夜、気温が20度に届かない絶好のコンディションのもと、
選手と観客が作り出したものは非常に熱いものでした。

日本でダイアモンドリーグに認定される大会が誕生する日は・・・
正直、まだ遠いでしょう。

気候やロケーション(東アジア)の問題だけでなく、
「陸上競技」に本当に情熱を持つ人をいかに増やしていくかだと思います。


(大会の締めくくりは花火)

TARO

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